不動産の顧問弁護士は何をする?費用相場と失敗しない選び方

不動産の顧問弁護士は何をする?費用相場と失敗しない選び方

不動産の仕事では、契約書に判を押した後に本当の勝負が始まる、という言い方をよくします。売買なら引渡し後に見つかる雨漏りや境界のずれ、賃貸なら退去時の原状回復や賃料の滞納。私は八王子で不動産会社や店舗を構える経営者から日々相談を受けていますが、こじれた案件の多くは「法律を知らなかった」からではなく、判断を先送りにしたまま現場が動いてしまったことから生まれています。

顧問弁護士を置く意味は、まさにその「先送り」をなくすところにあります。契約書を送る前に一度見てもらう、滞納が2か月目に入った時点で方針を決める、退去立会いの写真を撮っておく。どれも小さな一手ですが、後で数百万円の差になることも珍しくありません。

とはいえ、月額の固定費を払ってまで顧問弁護士を付ける価値が本当にあるのか、不動産に詳しい弁護士をどう見分ければよいのか、迷う気持ちもよく分かります。この記事では、不動産業の現場で顧問弁護士が実際にどう動くのか、費用の相場はどのくらいか、契約前に何を確かめるべきかを、私自身の経験を交えてお伝えします。読み終えたとき、あなたの会社に顧問弁護士が必要かどうかを自分の言葉で判断できるようになるはずです。

主要なポイント

  • 不動産業で顧問弁護士が担う役割と相談できる場面
  • 売買・賃貸・管理の場面ごとに起きやすいトラブルの中身
  • 不動産会社の顧問料の相場と月額に含まれる業務の線引き
  • 不動産に詳しい弁護士を見極める基準と契約前の確認事項
目次

1. 不動産の顧問弁護士とは?役割と必要になる場面

不動産の顧問弁護士とは?役割と必要になる場面

まず、不動産の現場で顧問弁護士が何をしているのか、そしてなぜ他の業種以上に必要とされるのかを見ていきます。売買、賃貸、管理、法改正、労務やクレームと、場面ごとに相談内容ががらりと変わるのが不動産業の特徴です。単発依頼との違いも、この章で明らかにします。

1-1. 不動産業に顧問弁護士が求められる理由

不動産業に顧問弁護士が求められる理由

不動産業は、ひとつの取引に動く金額が大きく、関わる当事者も多い商売です。売主、買主、借主、貸主、仲介会社、管理会社、金融機関、工事業者。誰か一人の認識がずれるだけで、契約全体が揺らぎます。しかも、その多くが契約書や重要事項説明書という「書面」を土台にしているため、書面の一文字が数百万円を左右する場面が本当にあるのです。

加えて、不動産業には宅地建物取引業法(宅建業法)、借地借家法、民法、建築基準法、区分所有法など、守るべき法律が幾重にも重なっています。国土交通省の調査によると、宅地建物取引業者の数は令和7年3月末時点で132,291業者と11年連続で増えており、行政指導の件数も592件と前年度より1割以上増加しました(出典:国土交通省「令和6年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果について」)。業者が増えれば競争は激しくなり、行政の目も細かくなる。法令を守りながら攻めの営業を続けるための相談相手が必要になるわけです。

もうひとつ、私が現場で感じている理由があります。それは、不動産のトラブルは「時間との勝負」だということ。賃料の滞納は放っておけば毎月膨らみ、引渡し後の不具合は時間が経つほど原因の特定が難しくなります。顧問弁護士は、あなたの会社の物件や取引の癖、過去の揉めごとを知った状態で待機している存在です。この差が、初動の速さに直結します。

不動産業で顧問弁護士が必要とされる3つの理由

1つ目は、書面の精度が取引の成否を分けること。2つ目は、宅建業法をはじめとする規制が多く、行政の監督も細かくなっていること。3つ目は、時間が経つほど不利になるトラブルが多く、初動の速さが結果を決めることです。

場面起きやすいトラブル顧問弁護士の関わり方
売買(売主・仲介)重要事項の説明漏れ、契約不適合、手付・ローン特約による解除書面の事前確認、引渡し後の責任の線引き
仕入れ(買取・競売)占有者の存在、借地権や越境、再建築不可の見落とし資料の読み込みと法的な地雷の洗い出し
賃貸仲介・管理賃料滞納、原状回復、更新・解約条件、近隣からの苦情督促から明渡しまでの段取り、敷金精算の基準づくり
建築・工事追加工事代金の未払い、工期の遅れ、施工不良請負契約の確認、工事記録の残し方の指導
社内・対外従業員の労務問題、悪質なクレーム、口コミでの中傷就業規則の点検、窓口としての対応、削除請求
不動産会社からの顧問契約の相談に使う木村雅一法律特許事務所 八王子本部の相談室
八王子本部の相談室。不動産会社や店舗経営者からの顧問契約のご相談は、こちらでお受けしています。

1-2. 不動産売買で弁護士が関わる主な場面

不動産売買で弁護士が関わる主な場面

不動産売買で弁護士が関わる場面は、大きく「契約前」と「引渡し後」に分かれます。契約前は書面の確認と条件の交渉、引渡し後は契約不適合責任をめぐる対応です。

契約書と重要事項説明書の事前確認

売買契約書と重要事項説明書は、宅建業者にとって業務の中核であると同時に、最も紛争の火種になりやすい書面です。国土交通省がまとめている苦情・紛争相談の集計でも、原因として「重要事項の説明等」が長年にわたり最も多くを占めています。口頭で伝えたつもりが書面に残っていなかった、という食い違いが典型でしょう。

顧問弁護士に事前確認を頼むと、私は次のような点を見ます。ローン特約の解除期限が現実的か、手付解除の期限と方法が明確か、境界や越境物の扱いが特約に書かれているか、告知事項(過去の事故や近隣の状況など)の記載が裁判例の水準に照らして十分か。「いつも使っているひな形だから大丈夫」という物件ほど、個別事情が抜け落ちているものです。

仕入れ段階の相談も増えています。買取再販や競売物件の取得では、現況調査報告書や物件明細書を読み込み、占有者の有無や借地権の負担、再建築の可否といった法的な地雷を洗い出す必要があるからです。顧問弁護士が一枚かんでいれば、購入判断の材料に法的リスクを組み込めるでしょう。

引渡し後の契約不適合責任への備え

2020年4月の民法改正で、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わりました。買主は、物件が契約の内容に適合しない場合、修補の請求、代金減額、損害賠償、契約の解除を選べます。売主である不動産会社にとっては、この責任をどこまで負うのか、期間をどう区切るのか、免責特約が有効な範囲はどこまでかを契約書で決めておくことが、引渡し後の紛争を左右します。

たとえば、引渡しから半年後に雨漏りが見つかり、買主から修補費用を請求されたとします。契約書に「引渡し後3か月以内に通知した不適合に限り責任を負う」という条項があれば、責任の範囲は大きく変わります。一方で、売主が知りながら告げなかった事実については、こうした特約があっても責任を免れません。顧問弁護士は、契約時の条項の設計に加えて、紛争が起きた後に「どこまでが会社の責任か」を冷静に線引きする役割も担います。

1-3. 賃貸管理で弁護士に相談できること

賃貸管理で弁護士に相談できること

賃貸の仲介や管理を手がける会社では、売買より件数が多く、金額は小さいけれど長引きやすいトラブルが日常的に起きます。賃料の滞納、無断転貸、入居者同士の騒音の争い、退去時の原状回復、敷金の精算。管理戸数が増えるほど、こうした案件は「常にどこかで起きている」状態になるでしょう。

賃料滞納から明渡しまでの進め方

賃料滞納への対応で大切なのは、感情ではなく段階を決めて動くことです。滞納1か月目は電話と書面での督促、2か月目で保証会社への請求と本人・連帯保証人への通知、3か月目に入ったら弁護士名での催告と契約解除の予告。このように「何か月目に何をするか」をあらかじめ決めておくだけで、担当者が迷う時間が消えます。

裁判例では、賃料の滞納が3か月程度続き、貸主と借主の信頼関係が壊れたと評価できる場合に、契約解除と明渡しが認められる傾向にあります。逆に言うと、滞納が短期間で催告にも応じている場合は、解除が認められないこともあるのです。鍵を交換したり荷物を運び出したりする「自力救済」は、たとえ滞納が事実でも違法と判断され、損害賠償を請求される危険があります。顧問弁護士がいれば、解除通知の文面から明渡しの訴訟、強制執行の段取りまでを、一本の流れとして設計できます。

原状回復と敷金精算をめぐる争い

退去時の原状回復は、賃貸に関する相談の中で最も件数が多い分野です。国民生活センターに寄せられた賃貸住宅の原状回復トラブルに関する相談は、2025年度で14,711件にのぼり、前年度より増えています(出典:国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブル」)。借主側の意識が高まっているぶん、管理会社や貸主が根拠のあいまいな請求をすると、すぐに争いになります。

民法改正で、通常の使用による損耗や経年変化は借主の負担にならないことが条文に明記されました。壁紙の日焼けや家具の設置による床のへこみは原則として貸主の負担、たばこのヤニ汚れやペットによる傷は借主負担となる余地があります。この線引きを個別の物件で判断するとき、入居時の写真、退去立会いの記録、工事見積書の内訳が決め手です。記録が残っていない案件は、法律論の前に事実の証明で負けてしまうということを、ぜひ覚えておいてください。

◆弁護士のワンポイントアドバイス

私が管理会社の方によくお願いしているのは、退去立会いのときに「傷の写真」だけでなく「傷がない場所の写真」も撮ってもらうことです。後日「この傷は元からあった」と言われたとき、入居時に撮った同じ場所の写真が一枚あるだけで、話が数分で終わります。契約書の特約を見直すより先に、現場の記録の取り方を変える。それだけで原状回復の争いは目に見えて減ります。

1-4. 宅建業法の順守と法改正への対応

宅建業法の順守と法改正への対応

宅建業法は、免許制度、重要事項説明、契約書面(37条書面)の交付、報酬額の上限、広告の規制など、宅建業者の業務を細かく縛っています。違反があれば指示処分、業務停止、免許取消といった監督処分の対象になり、令和6年度には全国で147件の処分が行われました。処分は取引先や金融機関からの信用にも響くため、法令の順守は「守り」ではなく「営業の土台」だと私は考えています。

顧問弁護士が日常的に確認するのは、たとえば次のような点です。広告の表示が誇大広告や「おとり広告」にあたらないか、電子契約や電子交付を導入する際の承諾の取り方が法の要件を満たしているか、報酬額の計算が上限を超えていないか。どれも社内のチェック表で回せそうに見えて、解釈の分かれ目で判断を誤ると、そのまま処分や損害賠償につながる項目です。

法改正への対応も欠かせません。ここ数年だけでも、民法の賃貸借ルールの見直し、賃貸住宅管理業法の施行、押印廃止と電子交付の解禁、相続登記の義務化、そして2026年4月施行の区分所有法改正と住所変更登記の義務化など、不動産の実務に直結する改正が続いています。区分所有法の改正では管理組合の決議要件が緩和されたため、マンション管理を受託する会社や区分所有物件を扱う仲介会社は、説明の内容や契約書のひな形を見直す必要があるでしょう。顧問弁護士がいれば、改正のたびに「自社の業務のどこを変えるべきか」を具体的に落とし込めます。

注意したい落とし穴

法改正の情報は業界団体の研修などで耳に入りますが、「知っている」と「自社のひな形や業務の流れが変わっている」は別物です。改正のたびに、契約書のひな形、説明資料、社内のチェック表の3点を一緒に見直す習慣をつけてください。

木村雅一法律特許事務所 八王子本部の書棚に並ぶ民事裁判例や物権法などの法律書
八王子本部の書棚。民事裁判例集や物権法の専門書は、不動産の相談で日常的に開いています。

1-5. 労務やクレーム対応も顧問の守備範囲

労務やクレーム対応も顧問の守備範囲

不動産会社の相談は、物件や契約の話ばかりではありません。むしろ私の実感では、営業担当者の残業代請求、固定残業代や歩合給の設計、退職した社員による顧客情報の持ち出しといった労務問題のほうが、経営者にとって切実なことも多いのです。不動産営業は成果報酬の割合が大きく勤務時間も不規則になりやすいため、賃金の仕組みを法律に合わせておかないと、退職者から数百万円単位の未払い残業代を請求される事態が起きます。

顧問弁護士は、就業規則や賃金規程の点検、問題のある社員への指導記録の残し方、懲戒や解雇の前に踏むべき手順といった相談を平時から受けます。ハラスメントの申告があったときの事実調査も、初動を誤ると会社側の責任が問われる分野です。

対外的なクレーム対応も顧問の守備範囲です。正当な要求を超えて執拗に連絡してきたり、担当者を長時間拘束したりする入居者や買主に対しては、弁護士が窓口になることを通知するだけで、現場の負担が大きく減ることも珍しくありません。口コミサイトやSNSに事実と異なる書き込みをされたときの削除請求や発信者情報の開示請求も、顧問弁護士に相談できる分野です。不動産会社は地域の評判が営業に直結しますから、放置せず早めに手を打つ価値があります。

1-6. 不動産トラブルが得意な弁護士への単発依頼との違い

不動産トラブルが得意な弁護士への単発依頼との違い

「トラブルが起きたときに、不動産トラブルが得意な弁護士に単発で頼めばよいのでは」という考え方も、もちろんあります。年に一度も揉めごとがない会社であれば、それで足りる場合もあるでしょう。ただ、単発依頼と顧問契約には、費用以外にも見過ごせない違いがあります。

1つ目は、初動までの時間です。単発依頼では、弁護士を探し、利益相反の確認を経て委任契約を結び、取引の背景を一から説明する必要があり、どうしても数日から数週間かかります。顧問契約であれば、事情を知っている弁護士に電話一本で相談でき、最低限の事実確認だけで方針が立ちます。

2つ目は、相談の「敷居」です。単発依頼だと、相談料が発生することを意識して「もう少し様子を見よう」と先送りしがちです。ところが不動産のトラブルは、様子を見ている間に証拠が失われ、滞納額が膨らみます。顧問契約では月額の範囲で気軽に相談できるため、問題がまだ小さいうちに手を打てるのです。

3つ目は、予防の視点が入ることです。単発依頼は起きたトラブルの処理が仕事ですが、顧問弁護士は「次に同じことが起きないように、ひな形や業務の流れをどう変えるか」まで一緒に考えます。あなたの会社では、同じ種類の揉めごとが繰り返し起きていないでしょうか。もしそうなら、仕組みの見直しが必要な合図かもしれません。

2. 不動産の顧問弁護士の費用相場と選び方

不動産の顧問弁護士の費用相場と選び方

ここからは、顧問弁護士を実際に検討する段階で気になる「いくらかかるのか」「どう選ぶのか」を扱います。顧問料の相場と月額に含まれる業務の線引き、不動産に詳しい弁護士を見極める基準、東京で探すときの視点、契約前に確認したい体制、当事務所の顧問契約の特徴まで順にお伝えします。

2-1. 不動産会社の顧問料の相場と料金体系

不動産会社の顧問料の相場と料金体系

顧問料の水準は事務所ごとに自由に決められていますが、中小企業向けでは月額3万円から5万円程度が最も多い価格帯です。日本弁護士連合会の調査でも、月3時間程度の相談枠を前提にすると、月額5万円か3万円と答えた弁護士が8割以上を占めていました。不動産業では契約書の分量が多く、賃料滞納や工事代金の回収も発生しやすいことから、月額5万円から10万円程度のプランを選ぶ会社が多い印象です。以下の金額は、あくまで一般的な目安として捉えてください。

会社の規模・業態月額顧問料の目安含まれることが多い業務
個人事業主・賃貸オーナー5,000円〜30,000円メールや電話での相談、簡単な契約書の確認
小規模な不動産会社(〜20名)30,000円〜50,000円月数時間の相談、定型契約書の確認、労務の初期助言
中規模の不動産・管理会社(21〜100名)50,000円〜100,000円随時の相談、就業規則の改定、非定型の契約審査、内容証明の発送枠

料金体系は、月額固定で決められた範囲の業務を受ける「固定型」、弁護士の稼働時間に単価を掛けて精算する「時間制」、月額に一定の相談枠を含め、超えた分だけ割引単価で精算する「折衷型」の3つに分かれます。相談の波が大きい不動産会社では、繁忙期に請求が跳ね上がりやすい時間制より、固定型か折衷型のほうが予算を立てやすいでしょう。

月額顧問料に含まれる業務と別料金の線引き

顧問契約で最も認識のずれが生じやすいのが、この線引きです。月額顧問料は、基本的に「社内向けの助言と窓口の維持」に対する対価。弁護士が会社の代理人として相手方と直接交渉する示談や、訴訟・労働審判・仮差押えといった裁判手続は、別途着手金や報酬金がかかるのが一般的です。

業務の種類月額に含まれることが多い業務別料金になることが多い業務
法律相談電話・メール・オンラインでの日常相談(時間枠内)枠を超えた長時間の相談
契約書定型的な売買・賃貸借契約書の確認、軽微な修正案一からの新規作成、英文契約、複雑な開発案件の契約
書面督促文や社内通知の文面の添削弁護士名義の内容証明郵便(プランによる)
相手方対応対応方針の助言代理人として前面に立つ交渉
裁判手続見通しの分析、証拠の評価明渡し訴訟、労働審判、仮差押えなど

契約前には、月あたりの相談時間の上限、契約書確認の通数、内容証明の発送が含まれるかどうかを、書面で確かめておくことをおすすめします。費用の比べ方については、顧問弁護士の費用はどう比べる?月額料金と契約前の確認事項でさらに詳しく解説しています。

顧問先割引で個別案件の費用はどう変わるか

個別案件の弁護士費用は、紛争の対象となる経済的利益の額を基準に計算するのが一般的です。たとえば、300万円以下の案件なら着手金が8%、報酬金が16%といった算定方法が、今も広く使われています。顧問先には、ここから10%から30%の減額が適用されることが多く、賃料滞納の明渡し訴訟や工事代金の回収訴訟が年に数件ある会社であれば、割引額が顧問料を上回ることもあります。

◆弁護士のワンポイントアドバイス

顧問料の高い安いを比べる前に、私は「昨年1年間で、法律の判断が必要になった場面を書き出してみてください」とお願いしています。契約書を送った回数、滞納が発生した件数、退職者とのやり取り、クレームの件数。これを並べると、月に何時間の相談枠が必要か、内容証明の発送枠が要るかが見えてきます。相場から選ぶのではなく、自社の1年から逆算して選ぶ。これが、払い過ぎも足りな過ぎも防ぐ一番の近道です。

2-2. 不動産に詳しい弁護士かを見極める基準

不動産に詳しい弁護士かを見極める基準

弁護士なら誰でも不動産の案件を扱えますが、不動産に詳しい弁護士かどうかで、相談の質は大きく変わります。私が見極めの基準として挙げたいのは、次の4点です。

第1に、宅建業法や借地借家法の「実務的な運用」を語れるかどうか。条文の説明だけでは足りません。定期借家契約の事前説明書面の要件、更新料特約が有効とされる条件、保証会社を使った場合の連帯保証人の扱いなど、現場で実際に迷う点について具体的な答えが返ってくるかを確かめてください。

第2に、図面や写真、見積書といった「現場の資料」を読み込む姿勢があるかどうか。原状回復や施工不良の案件では、契約書の文言だけで結論は出ず、工事の内訳や現況写真を見て判断する必要があります。資料を見ずに一般論で答える弁護士は、不動産の案件に慣れていない可能性があります。

第3に、「できません」で終わらせず代替案を出せるかどうか。不動産の取引は、法的なリスクがゼロになることはまずありません。リスクを指摘するだけの弁護士より、「この条項をこう変えれば、営業上の目的を保ちながらリスクを下げられる」と提案できる弁護士のほうが、経営の役に立ちます。

第4に、裁判の前に交渉で解決へ導く姿勢があるかどうか。明渡しや原状回復の争いは、訴訟にすれば時間も費用もかかります。相手方の事情を読み、早い段階で妥当な落としどころを示せる弁護士であれば、結果として会社の負担は軽くなるでしょう。実績は、「賃料滞納の明渡しを何件、どう解決したか」といった具体的な聞き方で確かめてみてください。

2-3. 東京で不動産に強い弁護士を探すときの視点

 東京で不動産に強い弁護士を探すときの視点

東京には数多くの法律事務所があり、不動産に強い弁護士を探すこと自体は難しくありません。むしろ迷うのは「どの事務所が自社に合うか」でしょう。私が大切だと考える視点を3つお伝えします。

1つ目は、地域の慣行と条例への理解です。東京都には「賃貸住宅紛争防止条例」、いわゆる東京ルールがあり、住宅の賃貸借を仲介する宅建業者は、原状回復や修繕の負担区分を書面で説明する義務を負います。こうした地域特有のルールは、日常的に都内の案件を扱っている弁護士のほうが細かい運用まで押さえています。

2つ目は、物件の現地に足を運べる距離感です。境界の争いや施工不良、店舗の原状回復などは、写真だけでは分からないことが少なくありません。多摩地域に物件を多く抱える会社であれば、都心の事務所より八王子や立川に拠点を置く事務所のほうが、現地確認の往復に無理がない場合もあります。

3つ目は、規模より「相談のしやすさ」です。大規模な事務所は頼もしい反面、担当者が固定されず、相談のたびに事情を説明し直すことになるという声も耳にします。あなたの会社の物件や取引先を継続的に把握してくれる担当弁護士がいるか、その担当者に直接連絡できるかは、事務所の規模以上に大切な要素です。

◆弁護士のワンポイントアドバイス

八王子で仕事をしていると、都心の事務所に顧問を頼んでいた会社から「現地を見てほしいと言いにくい」という声を聞くことがあります。不動産の案件は、現場を一度見るだけで論点が半分に減ることもあるものです。事務所の場所は、単なる利便性ではなく、相談の質に関わる条件だと考えてみてください。

花が飾られた木村雅一法律特許事務所 八王子本部の受付カウンターと法律書の本棚
八王子本部の受付。ご来所の際は、こちらでお声がけください。

2-4. 契約前に確認したい相談の進め方と体制

契約前に確認したい相談の進め方と体制

候補の事務所が絞れたら、契約前に「実際の運用」を確認しておきましょう。顧問契約は1年単位の自動更新が多く、始めてから「思っていたのと違う」となると切り替えに手間がかかるからです。

まず、相談の方法と連絡手段です。電話、メール、オンライン面談に加えて、チャットでのやり取りに応じてもらえるか、緊急時に担当弁護士の携帯電話に連絡できるかを確認してください。不動産のトラブルは、退去立会いの現場や契約締結の直前など、「今すぐ判断が欲しい」場面が多いからです。

次に、回答までの目安となる時間です。契約書の確認に何営業日かかるのか、急ぎに対応してもらえるのかは営業の速さに直結します。担当弁護士が不在のときに代わりに対応する体制があるかも、聞いておくと安心です。

さらに、契約期間、解約の条件、更新の手続きも確かめておきましょう。途中解約の可否や予告期間、支払済みの顧問料の扱いを事前に把握しておけば、後の行き違いを防げます。顧問弁護士の氏名を自社サイトに表示できるかどうかも、確認しておくとよい項目です。

そもそも顧問契約を始めるタイミングに迷っている段階であれば、中小企業に顧問弁護士は必要?相談を始めるタイミングと準備も参考にしてください。また、契約書の確認を依頼するときに揃えておきたい資料は、契約書レビューを依頼するとき、先に揃えておきたいことにまとめています。

2-5. 当事務所の不動産分野における顧問契約の特徴

当事務所の不動産分野における顧問契約の特徴

最後に、弁護士法人木村雅一法律特許事務所の顧問契約について、不動産分野に絞ってご紹介します。当事務所は1997年に八王子で開設し、2007年に弁護士法人となりました。現在は八王子本部のほか、札幌支部と士別支部の3拠点で、首都圏と北海道の企業をお手伝いしています。

不動産・店舗法務で扱っているのは、店舗や事務所の賃貸借契約、賃料や更新条件の交渉、原状回復をめぐる紛争、退去と明渡しの手続、不動産売買契約、建築・工事契約とそれに伴う紛争です。私たちが一貫して大切にしているのは、契約書と現場の記録を照らし合わせるという姿勢。契約書や特約条項だけでなく、入居時の状態や改装の経過、修繕のやり取りを確認し、原状回復の範囲を契約の文言と工事内容の両面から具体的に特定します。写真、図面、見積書、立会いの記録は後から再現できないため、退去や工事の前に残していただくよう顧問先には繰り返しお願いしています。

顧問契約は、月額33,000円のライト、55,000円のスタンダード、110,000円のサポートの3つのプラン(いずれも税込)から選んでいただけます。スタンダード以上では担当弁護士の携帯電話への直通連絡と従業員からの相談にも対応し、サポートでは土日祝日の対応や定期訪問、社内研修まで含みます。個別案件を依頼される場合は、プランに応じて10%から30%の顧問先割引を適用します。契約期間は1年で自動更新ですが、途中での解約もいつでも可能です。

初回のご相談について

顧問契約の内容や料金のご説明、契約前の企業訪問には相談料をいただいていません。個別の法律相談は来所30分5,500円(税込)、電話・オンライン30分11,000円(税込)ですが、顧問契約を結んでいただいた場合は、初回相談料を11,000円を上限に初月の顧問料から差し引きます。まずはお問い合わせフォームまたはお電話(八王子本部:042-631-5160)でご連絡ください。

木村雅一法律特許事務所 八王子本部の事務所名と所属弁護士名が並ぶ入口看板
八王子本部の入口看板。事務所名と所属弁護士の名前を掲げています。

2-6. 不動産の顧問弁護士に関するよくある質問(FAQ)

不動産の顧問弁護士に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 従業員が数名の小さな不動産会社でも、顧問弁護士は必要ですか?

A. 従業員が数名でも、扱う金額は大きく、宅建業法の規制は規模に関係なく適用されます。むしろ小さな会社ほど、経営者が営業も契約も労務も一人で判断しており、判断が遅れやすいのが実情です。月額3万円前後のプランで日常の相談と契約書の確認だけを頼む形から始める会社も少なくありません。必要かどうかは、規模より「判断に迷う場面がどのくらいあるか」で考えてみてください。

Q2. 売買契約書や重要事項説明書のチェックは、顧問料の範囲で頼めますか?

A. 定型的な契約書の確認や軽微な修正案の提示は、多くの事務所で月額顧問料の範囲に含まれています。当事務所でも、プランごとに定めた通数の範囲で対応しています。一方、特殊な物件の契約書を一から作成する場合や複雑な開発案件の契約は、別途見積りになるのが一般的です。契約前に通数と分量の目安を確認しておくと安心でしょう。

Q3. 個人の賃貸オーナーでも、顧問契約を結べますか?

A. 結べます。複数の物件を持ち、滞納や原状回復の対応が年に何度か発生するオーナーであれば、顧問契約の価値は十分にあります。管理会社に任せている場合でも、最終的な判断や費用の負担はオーナーに返ってくるため、別に相談相手を持っておくと、管理会社の提案を客観的に検討できます。

Q4. 家賃滞納者への内容証明や明渡しの交渉まで、顧問料の範囲ですか?

A. 弁護士名義での内容証明郵便の発送や、代理人として相手方と直接交渉する業務は、月額に含まれるかどうかが事務所やプランによって分かれます。多くの場合、方針の助言と文面の添削までが顧問料の範囲で、弁護士が前面に立つ交渉や明渡し訴訟は別途費用です。ただし顧問先割引が適用されるため、単発で依頼するより費用は抑えられます。

2-7. まとめ|不動産の顧問弁護士で予防と即応の体制を

まとめ|不動産の顧問弁護士で予防と即応の体制を

不動産業は、書面の一文字と現場の記録ひとつで結果が変わる仕事です。顧問弁護士は、契約前の確認で紛争の芽を摘み、滞納や不具合が起きたときには事情を知った状態で即座に動く、予防と即応の両方を担う存在だと言えます。

  • 不動産業では、書面の精度、宅建業法の順守、滞納や原状回復への初動の速さが経営を左右する
  • 売買、仕入れ、賃貸管理、建築、労務、クレームまで、顧問弁護士に相談できる場面は幅広い
  • 顧問料は月額3万円から10万円程度が目安で、月額に含まれる業務の線引きを契約前に確認する
  • 不動産に詳しい弁護士かどうかは、実務の運用、現場の資料、代替案、交渉力の4点で見極める
  • 東京で探すなら、地域のルールへの理解、現地に足を運べる距離感、担当者への相談のしやすさを重視する

あなたの会社で昨年起きた揉めごとを、もう一度思い返してみてください。そのうちいくつが、契約前のひと声や現場の記録一枚で防げたでしょうか。その答えが、顧問弁護士を検討する一番の理由になります。当事務所では、顧問契約のご説明と契約前の企業訪問を無料で行っていますので、不動産の顧問弁護士をお考えの際は、お気軽にご相談ください。

目次